アルツハイマー型認知症=アルツハイマー病(AD)は世界的に最も多い神経変性疾患です。
正式名称をAlzheimer's basket cellsといいます。
1907年にドイツの精神科医であるアイロス・アルツハイマー博士が初めて報告した病気で、報告者である博士の名前が病名につけられました。
この病気は、脳内で特殊なタンパク質異常が起こり、脳内のニューロン・シナプスが脱落していきます。
脳内の神経細胞がどんどん壊れ、脳が次第に萎縮していき、知能、身体全体の機能も衰えていきます。
そして、二次性の呼吸器合併症などによって最終的に死に至ることも少なくありません。
アルツハイマー病の原因は未だわかっておらず、特効薬といえる治療薬も、治療法もありません。
アロイス・アルツハイマー博士は、ドイツの精神医学者です。
彼は、フランクフルト市立精神病院勤務などを経て、エミール・クレペリン(ドイツ精神医学の源流)のもとでルードウィヒ・マキシミリアン大学に勤務しました。1901年に診療した、アウグステ・Dという嫉妬妄想、記憶力低下などを主訴とする患者の症例を1906年に南西ドイツ精神医学会に発表し、この症例が後に「アルツハイマー病」と呼ばれる現在のいわゆる「認知症」の多くを占める疾患として広く認知されるとともに、多くの医学・薬学研究者の生涯の研究テーマとして現在も主流となっています。アルツハイマー博士が克明に記録したアルツハイマー病という疾患概念は、1910年のエミール・クレペリンの著述になる精神医学の教科書で大きく取り上げられ、現在もアルツハイマー病、アルツハイマー型認知症、などの疾患名として確立されています。
アルツハイマー型に次いで発症数が多く、また、男性に多いレビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。1976年に、日本の小阪憲司(現横浜市立大学名誉教授)らによって報告され、1995年にレビー小体型認知症という名称が付けられました。アルツハイマー型が、女性の発症率が高いのに比べ、レビー小体型は男性の方が多く、女性の約2倍と言われています。
ここでは前者のアルツハイマー型認知症についてふれていきます。
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の減少、脳の萎縮、脳への老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とします。
脳の中にβアミロイドと呼ばれるタンパク質がたまり出すことが原因の一つとされていて、βアミロイドが脳全体に蓄積することで健全な神経細胞を変化・脱落させて、脳の働きを低下させ、脳萎縮を進行させると言われています。
しかし、はっきりした原因は未だに分かっていません。
アルツハイマー型認知症の発症と進行は比較的緩やかです。
しかし、確実に、徐々に悪化していきます。
多くの場合、物忘れ(記憶障害)から始まり、時間、場所、人の見当がつかなくなります(見当識障害)。
物忘れは、病気の進行とともに「最近のことを忘れる」から「昔のことを忘れる」というように変化し、次第に過去の記憶や経験などを失っていきます。
←老人班
アルツハイマー型認知症の特徴として、大脳の後半部(側頭葉、頭頂葉、後頭葉)の萎縮が次第に進むことです。
まず、脳の側頭葉と呼ばれる部分の海馬の脳神経細胞が減るところからはじまります。
海馬は短期記憶をつかさどる場所です。その部分が損傷を受けるので、病気の初期段階のうちは「今さっきの記憶」が思い出せなくなります。
脳組織の変化としては、「アミロイド」と呼ばれるたんぱく質の沈着(アミロイド斑とか老人斑という)と非常に溶けにくい「タウたんぱく」からできる神経原線維が出現します。
アミロイドの沈着は、お年寄りの場合だと認知症患者でなくてもしばしば見られます。
そのため老人斑とも呼ばれています。
アルツハイマー型認知症では比較的早期から側頭葉を中心にこの沈着が認められ、その程度も強いのが普通です。
そして、脳の後半部に高度の萎縮がみられるようになります。
こうした変化とともに、正常な神経細胞が徐々に脱落し、認知症障害の状態になっていくのです。
病理学者のブラークは、初期の軽い変化の状態から、最も進んで神経細胞がほとんど脱落した状態まで6段階に分けています。
認知症の症状が出始めるのは3期の終わりから4期の始めにかけてといわれています。
アルツハイマー病にみられる神経組織の変性は、実際に認知症の症状が現れるかなり前から始まっており、発病中の全期間の中頃から症状がはっきりしてくる、極めて長い経過をとる進行性の病気です。
病気の原因はまだわかっていません。しかし、全体の10%を占める「家族性アルツハイマー病」ではいくつかの遺伝子異常が判明、アミロイドたんぱくの沈着や神経細胞脱落のメカニズムも次第に明らかになってきました。
また、非家族性のアルツハイマー病でApo E(アポ・イー)という物質に関する遺伝子異常が多いことがわかっています。
実際には70歳を過ぎてから痴呆症状が出るのが普通で、男女比はほぼ2:3で女性に多く、痴呆が出てから死亡までの平均罹病期間は約5年といわれています。
症状の出現はいつからかははっきりせず、その後は徐々に痴呆が進み、最後は全身衰弱や肺炎などの感染症で死亡する場合がほとんどです。
その間、歩行障害や、筋肉が固くなる、失禁などの身体症状を伴うことがあります。
一方、時間や場所を正しく認識する「見当識」が次第に崩壊し、幻覚や妄想が現れたりしますが、本人はその病識がなく、無欲状態やうつ状態、もしくは多動、いらつき、不安、だれに対しても強い敵意を抱くなどの精神症状を伴うことがしばしばです。
これで、社会的行動と個人の習慣も次第に崩壊していきます。
特徴
・早い時期から診断可能。
・進行すると家族の顔も分からなくなる。
・40歳代からの発症があり、しかも進行が早い。
・患者は、紙に立体図形が描けない。
発症する過程
・脳の中にβアミロイドと呼ばれるタンパク質が増え、たまり出す。
・βタンパクは中性エンドペプチド(酵素)が分解するが、患者はこの酵素量が少ない。
・タウタンパクが増加する
・神経細胞死が起きる
・アルツハイマー型認知症が発症する
アルツハイマー型認知症の症状は?
前駆症状
知的能力低下に先立つ2~3年前から、軽度の人格変化が起こる
(例: 頑固になった、自己中心的、人柄に繊細さがなくなった)
不安・抑うつ症状が出る
睡眠障害が出る
不穏、幻視妄想を認めることが多い
第一期に出る症状
健忘症状・・・ものごとを忘れる
空間的見当識障害・・・道に迷う
多動・・・徘徊を繰り返すようになる
第二期に出る症状
高度の知的障害、巣症状(失語、失行、失認)
錐体外路症状(筋固縮)・・・パーキンソン病と間違われることもある
第三期に出る症状
高度な認知症の末期で、しばしば痙攣、失禁が認められる
拒食・過食、反復運動、錯語、反響言語、語間代(例: ナゴヤエキ、エキ、エキ)がみられる
認知症の9大法則50症状と対応策 「こんなとき、どうしたらよい?」不思議な言動が納得 [ 杉山孝博 ]では、病状のあらわれかた、それへの対処の方法が具体的に記されており、勉強になります。
神経細胞が減って記憶障害などが起こるアルツハイマー病は、脳の大脳皮質などに染み出るようにできるアミロイド班(老人斑)が原因だとする説があります。
しかし、国立精神・神経センター神経研究所のグループは、マウスの実験で、アミロイド班(老人斑)はアルツハイマー病の「原因」ではなく、むしろ「結果」であることを示す実験結果を得ています。
アミロイド班(老人斑)は、βアミロイドと呼ばれるタンパク質が、大脳皮質などの神経細胞の周囲に沈着して出来ます。アルツハイマー病のアミロイド班(老人斑)原因説に対しては、認知症ではない人の脳からもアミロイド班(老人斑)が多く見つかることや、この病気で一番障害を受ける海馬にアミロイド班(老人斑)が少ないことなどから、これまでも疑問視する向きがありました。
国立・精神・神経センター研究所の崔得華・研究員、田平武・疾病研究第6部長らは中外製薬と協力して、その変異が家族性アルツハイマー病の引き金となることで知られるプレセニリン1という遺伝子をマウスに持たせるようにし、遺伝子が変異したマウスと、変異していないマウスを2年にわたって比べるという研究調査を行いました。
その結果、変異した遺伝子を持つマウスの方が、大脳皮質や海馬の神経細胞が大きく減っていることが分かりました。
しかも、このマウスにはアミロイド班(老人斑)はできませんでしたが、アミロイド班(老人斑)の主成分であるβタンパクは神経細胞の中に沈着していました。沈着を起こしている神経細胞の数も、遺伝子に変異がないマウスに比べて多かったのです。
このことから、同研究グループはプレセニリン1の変異はβタンパクを増加させるが、老人斑として沈着する前に神経細胞の中に沈着して、アルツハイマー病を起こしているとみています。
研究員の田平氏は「アミロイド班(老人斑)は、神経細胞が死んだ結果として出ているのではないか。
今後は、βタンパクが、どのように神経細胞内に沈着するかを明らかにすることで、アルツハイマー病の発症過程が分かってくる」と話しています。
酸性雨とアルツハイマー型認知症。何の関係もないようですが、この両者は密接な関係があると考えられています。
アルツハイマーの遠因として、脳の中のアルミニウム濃度の上昇も関係があるというのです。
これは、酸性雨によるアルミニウムイオンの流出が関係すると思われていて、雨中の酸性度が増すにつれてアルツハイマー患者が増えるのではないかと言われています。
アルツハイマー病患者の脳には黒い斑点状(老人斑)が点在します。
その要素がβアミロイドと呼ばれるものです。
βアミロイドは少量である場合には無害なのですが、たくさん集まると有害なものに変わってしまいます。
アルミニウムがアルツハイマー病の原因であるとされている理由は、そのβアミロイドをお互いにくっつけて有害化してしまう “接着剤”のような働きをすると考えられているためです。
最初にアルツハイマー患者の脳からアルミが検出されたのは1976年で、カナダの病理学者が発見しました。
ではなぜ、アルミニウムが脳に溜まってしまうのでしょうか?
アルミニウムは地表で3番目に多い元素で、土や岩石に多く含まれています。
また、自然の状態では中性に保たれているので水には溶けません。
しかし、酸性雨によって土壌が酸性化されるとアルミはイオン化し、水に溶けてしまうのです。
大気汚染のひどいアジア大陸方面の汚染により日本で酸性雨が降っています。
その酸性度は平均でPH5ぐらいだといわれています。その酸により、土壌などに含まれるアルミニウムが溶かされて、 他の物質と反応しやすいイオンの形になります。
そのアルミニウムイオンは野菜などの食物に吸収され、食べた人の中に入ってしまいます。
そして、本来血管内で鉄が取り込まれて運ばれるはずなのに、よく似た性質のアルミニウムが取り込まれてしまい、それが脳幹障壁を突破してしまうわけです。
体内に鉄分が不足するとアルミニウムが体内に取り込まれやすくなるというのも大きな問題です。
このようなことから、鉄分不足になりやすい女性のほうがアルツハイマー病の発症率が高いのではないかともいわれています。
もともと人体には不必要なアルミニウムが、こうした形で人間の体の中に入り込み、認知症の遠因になっているということ。
これは地球環境を無視した人間の代償であり、因果応報なのではないかと思わずにいられません。
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